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最高裁判所第一小法廷 平成8年(行ツ)111号 判決

上告人

神戸税務署長

西佐古国雄

右指定代理人

細川清

外一〇名

被上告人

株式会社シーシーエル破産管財人

田辺重徳

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人増井和男、同五十嵐義治、同秋山実、同大竹聖一、同吉野孝義、同山垣清正、同恒川由理子、同亀井幸弘、同栗谷桂一、同吉田泰則、同水谷稔の上告理由について

一 破産者の財産に対する滞納処分手続において交付要求がされたときは、交付要求に係る請求権に基づき破産宣告前に国税徴収法又は国税徴収の例による差押え(参加差押えができる場合は、これを含む。)がされている場合を除き、交付要求に係る配当金は、破産管財人に交付すべきものと解するのが相当である(最高裁平成七年(オ)第一九三七号同九年一一月二八日第三小法廷判決民集五一巻一〇号登載予定参照)。

二  これを本件についてみるに、原審が適法に確定したところによれば、(1) 上告人は、平成四年七月二三日、滞納者株式会社シーシーエルが第三債務者多津己産業株式会社に差入れ中の建物賃貸借の保証金の返還請求権につき、滞納処分による差押えをした、(2) 株式会社シーシーエルは、同年八月一三日、破産宣告を受け、被上告人が破産管財人に選任された、(3) 神戸市中央区長は、同月一七日及び二七日、上告人に対し、株式会社シーシーエルの滞納法人市民税等を徴収するため交付要求をした、(4) 上告人は、同年一一月一一日、右保証金返還請求権の取立てをした上、右交付要求に係る法人市民税等について配当の額を一七万二六〇〇円とする配当計算書を作成し、これを神戸市中央区長に交付する本件配当処分をした、というのであり、同区長は、株式会社シーシーエルが破産宣告を受ける前に、右保証金返還請求権について滞納処分による差押えをしていなかったことがうかがわれる。したがって、同区長が直接右配当金の交付を受けることはできないというべきであり、右配当金を被上告人に交付すべきであるとした原審の判断は正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

よって、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官小野幹雄 裁判官遠藤光男 裁判官井嶋一友 裁判官藤井正雄)

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